アメリカど初心者日記

テキサス、ドラァグレースとネットフリックス

『インプ・クイーンとドラァグ界におけるトランスドラァグクイーンの抹消問題』

トランスドラァグクイーンであるインプちゃんのインタビュー記事、by ALOK (gender noncorformingのアーティスト) を和訳しました。自身の英語力の問題でところどころ端折ったりしてます。すみません。

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impちゃんとインタビュアー

〜トランス界とドラァグ界がトランスドラァグクイーンの存在を排他的に扱うこととその非流動性。トランスコミュニティ間における相違。〜

 

ここはシカゴにあるアングラなクィアによるナイトライフの中心地。私たちはそこの地下にあるドラァグクイーンのバッグステージにいる。1番近いトイレは上階にあるけど衣装を出番前に公開したくないから、

「どうやってその格好でトイレに行くの?」とインプに聞いた。

「ほら排水管?があそこにあるでしょ、、古くからのクイーンの習わしなの!」

私がいるこの場所から魅力的なクィアドラァグの世界が始まった。

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私たちはプライドウィークでパフォーマンスをするためにシカゴの地元のゲイクラブにいて、インプは私より早くステージの順番が回ってくる。

彼女はピンクの衣装にアニメっぽいファブリック素材の胸パッドをつけてる。ガーリッシュで愛らしく、とても"インプ的"な衣装に身を包み、伝説的なニューヨークのアイコンにちなんで名付けられた自身のトラック「amanda lapore」を歌いながらダンスフロアを支配している。


突然彼女はステージ上でエストロゲンを打つ。ーそれはポリティカルアートだ。


世界で卓越したドラァグクイーンの一人であるル・ポールが、ドラァグレースにおけるトランス女性の参加について、「シスジェンダーの男がやることじゃない。ドラァグ界は男以外が参加すると皮肉や危機感を失う。ドラァグ全体の概念が変わってしまう。」と反対表明を示してから数ヶ月が経った。

「パフォーマンスを高めるドラッグ」としてル・ポールが退けているホルモンをたっぷり摂取したトランスドラァグクイーンであるインプがここにいる。彼女は偶像破壊主義者だ。

ドラァグレースに参加せずSNSで最も目立つドラァグクイーンの一人である。

 譲歩しない創造性の貯蔵庫、堂々とした風船の王冠、アイコニックなピンクフェイスなどのステージ衣装を記録するためにインスタグラムを使用している。

彼女は、インターネットにおいてジェンダー枠を超越したインプの世界観を魅せるだけの存在ではない。インスタライブを使ってメンタルヘルスやハラスメント、ドラァグシーンにおける苛立ちに纏わる苦しみを率直に話している。彼女はクィアパフォーマンスにおける理論を教えてくれるのだ。 

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今、ドラコンや「バッシュウィッグ」のような地元祭りの慣習を見るに、ドラァグは復興期を迎えてるようだ。ドラァグクイーンは私たちの自立心を芽生えさせるための導師であり、また、交換可能な季節限定のルックブック、そしてコミュニケーションのためのミームである。「あなたの星座は?」と尋ねる代わりに「あなたのお気に入りのクイーンは?」と尋ねるようになった。 

ドラァグクイーンは自分を愛すること、そして私たちの差異を認め合うためのシンボルになった。でも、私たちはドラァグクイーンを神格化する中で、彼女たちの実在を無視してきたのではないかと考えてしまう。

言い換えれば、「癒しの存在を癒すのは誰なのか?」ということ。私たちはドラァグクイーンが苦しみ、落ち込むことを許しているか?

彼女たちが自身の受けた暴行について語った時何が起こる?

インプは、ミソジニストがどうインプのパフォーマンス中に振舞っているのかなどについて、トラウマやトランスミソジニーについて語る。

 

彼らは言う: you better work

トランスパフォーマンスは答える: どこに行けば彼らが私たちを雇うわけ?

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2016年、初めてインプと出会った。

インプのすること全てが刺激的だった。

道端で話しかけてくる人が、インスタのフォロワーなのか、攻撃してくる人なのか分からない立場がどんなものなのか、その理解の乏しい状況を教えてくれる存在に出会うのは稀だ。何ヶ月か後、「何回『あなたが知るべきトランスとノンバイナリーアーティスト』に関する記事を投稿したらドラァグクイーンがコメントしてくれるんだろう」って批判したらフェイスブックに私をタグ付けしてくれた。

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トランスは容認を得るために、そして、私たちは短命なのではなくむしろ辛抱強いのだと、演じているのではなく永久的なものなのだと主張するためにドラァグクイーンと自身を区別して遠ざけなくてはいけなかった。

私たちの自然な姿を「神秘的」として扱う社会において、ここは自分らしくいれる場所だ。

見せかけが重要視される世界で、医者、フェミニスト、親、パートナーに、私たちは認知され、尊敬されるに値するリアルな存在であることを納得してもらわなければならない。

私たちのシスジェンダーの身内たちはこの尋問に固執しない。(なぜなら私たちがシスだから)私たちは誰かの「正当性」の基準について批評してはならない。

ジェンダーは私たちの行為"verb"によって定められるのではなく、私たちそのもの"subject"によって定められる。

 正統性は表面だけ取繕われ、希少資源のように分類され、白人のシス男性は中心グループにみなされ、残りの私たちは彼らの周りを回ってる、言わば湖に投げ込まれた石のような扱いを受ける。こうやってミソジニーが起こり、その不信感は対個人でなく構造上となる。

特に女らしいトランスは、ペテン師扱いを受け追い払われる。私たちは人格を持った人間として見なされるように彼らのイメージに合わせて自身を構築しなければいけない。

これはトランスの分断を招く戦略だ。

他のトランスと競うように仕向けられ、「私はああいうトランスとは違う」と言うことによって市民権を得るのだ。

この商業界では、あるアイデンティティだけ認められ、その他は間違いとして見なされる。だからトランスドラァグクイーンは自身の信念が障壁となる。

「舞台に上がらずとも普段からそんな格好してるのにどうやってあなたがドラァグクイーンだって言えるの?」なんて聞かれたりする。

でもこのような考え方は、ドラァグクイーンへの誤認識、定義の縮小に繋がる。ドラァグはただの「女の真似」ではなく、政治的で、コメディであり、ジェンダーと年齢を問わない美的感覚なのだ。

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インプのルックはふざけてて柔軟性があり、嘲笑うようなものであり、人間のジェンダーにおける慣習を巧妙に覆す。

全てのトランスとシス女性は、私たちの見た目に対する他者の圧力と監視に立ち向かわなければならない。インプのルックは、私たちがどんな格好をしていたとしても、自身のジェンダーを定義するのに他者の議論を必要としないということを私たちに思い出させてくれる。

 彼女はジェンダーを「段階」によって区分けしなくても良いことを教える。

インプのようなトランスドラァグクイーンを解雇することは、ドラァグ界における矛盾を映し出す。

私たちのアイデンティティが誤解されたり不合理、不可能と見なされる現状は、枠に当てはまることを拒絶する私たちをむしろ表舞台に立たせようとする。

矛盾は私たちをより野心的に思考させる機会となり、新しい理論的枠組みの必要性を露呈させる。インプは決して自身のドラァグと女らしさにおいて、どちらかをなおざりにすることはない。

 世界が彼女のタレント性を受け入れず拒絶しているのだ。彼女の魅力に伴わない彼女の経済的に不安定な状況を鑑みるに、ジェンダーにとらわれる私たちの考え方が根本的に間違っていることが提言できる。ファンタジーと思われる私たちは実在している。今、新しい理論的枠組みが必要とされている。

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ショーの後、私とインプは寿司屋に行った。(fishyをかけた彼女のジョークだ)

私たちはお互いの服を褒めあった後、ドラァグシーンにおける不満を話し合った。

彼女は苦しい出来事を思い出すにつけて会話の最中三回イラつきを見せた。

ー どうやってトランスドラァグクイーンとして活動するようになったの?

 「私は不安定な家庭と不安定な学校で成長した。それは小さい頃からフェミニンな見た目をしてた私にとっては良いことではなかった。

だから私はパフォーマンスをしてる。大人が私の話を聞いてくれて尊重してくれて、部屋いっぱいの人が励ましてくれる場所だから。外をただ歩いてるだけより、パフォーマンススペースにいる方がいつもリアルに感じた。」

ーどうやってシス男性によって支配されてるドラァグ界で生き抜いてる?

 「私たちのカルチャーを男がやるものだと分類しているドラァグレースに今までずっと出てない。 特に最初の数シーズンはドラァグが男のものであることを強調している。ある女の子が「私はこうやってドレスを着る。だけど私は男なの。」って言う。アウトオブドラァグが男である考えは比較的新しいものなのに。この考えの広まりに連れて多くの人々がドラァグを始めるようになった。もしドラァグがもっと性別が曖昧なカテゴリーに置かれていて毎日そのように他人から認識されるようなアートだったなら、ゲイ男性にとってもっと挑戦的なことであったと思う。

今は「私はまだ男で、性的資産(sexual capital)を持っていて、ゲイ男性の社会にまだ属している」って言いながら活動できる。」

 ーどうやって自身の安全を守りながらトランス女性として夜の仕事をこなしているの?

ドラァグ界において、シス男性が抱えることのない問題があると思う。

私は仕事場で日常的に性的暴行を受けてる。

私に対して性自認や性器に関するジョーク(he/ she / it joke)を飛ばしてきたり、「もしインプが性器をまだ持っているなら」「もし性器を切除しているなら」って尋ねてくる上司たちがいる。

(後に彼女が私に教えてくれた情報によると、このボスたちは、彼女がお金に関する質問をするたび性器について質問をしてくると言う。今夜の分の給料も未だ彼女は手にしていない。)

この日常的な暴力を手に負うほどの余裕と力を持っていない。私の体の周りに人を遠ざけるための大きな空間が欲しい。それか、他人に見られたくないからマスクが欲しい。でもお金がいるから今日も働くの。」

 ー今までトランスドラァグクイーンとしてあなたが受けてきたハラスメントについて話したことはある?

「当初はドラァグコミュニティがボーイズクラブのように感じてなかった。私はシスジェンダードラァグクイーンにはっきりと伝えることに苦心していた。なぜなら、従順かつフレンドリーでいたかったし、次も起用してもらいたかったから。仕事場で自身の悲しさを表現したり受けてきた暴力について話したら、今の状況に悪影響が及んでしまうから。

 私が"ゆっくり"とホルモン投与を始めた理由の一つは、「ドラァグレースに出てから性別移行を行う」のが慣例だったから。でも、ドラァグレースシーズン11のオーディションテープ締め切りの週にルポールがした発言を見て、私の中の何かが壊れてしまったの。」

 ーあなたにとってSNSは何を意味する?

SNSはとてもいい機会をもたらしてくれた。たくさんの性別移行治療がそのお影で可能になった。SNSにおいてハラスメントの矛先にたってもいない。私は痩せてて白人だから人気が出た。みんなは私の見た目から、私に財政的余裕があると思ってる。でも殆どの衣装(looks)は私のものじゃないの。」

 ーファンがどれだけあなたに憧れてるか伝えてくる状況ってどんな感じ?

 「ドラコンは強烈だった。3日間、人々がノンストップで私のことが大好きだって伝えにきて写真を撮るの。そのあと、ホテルで足を冷やしてる時に泣けてきた。なぜなら、圧倒された気がしたから。彼らが欲しがるものを与えられるとは思えなかった。

私は人をそう簡単に信じない。だからステージに立つことが魅力的に思えた。なぜなら観客のことを信じる必要がないから。観客の振る舞いが予想できる。観客と親密である訳ではないけど、場を支配できてリスクが少ない状況にいられる。」

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ーインタビュー後ー

 私たちはクラブでいくつか写真を撮った。6時間かけて準備をするインプを見てた。頭上に置かれたいくつもの風船など天才的な装飾に溢れてた。注意深くまつ毛と唇に化粧を施していた。人工的なものだからと私たちが拒絶する全ての物、フェミニン、遂行的、美的に関することがインプにとって真剣なビジネスの場なのだ。

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インプの最も魅力的な点は、トランスと女性にまつわる認識力と正直なところだ。インプのようなクイーンは見た目とメイクに殆どのお金を注ぎ込まなければいけない。バーやクラブは、全身フル装備でファンタジーに仕えて欲しいと思うくせに、彼女たちの見た目を後援することをアホらしいと思うだろう。何でドラァグクイーン労働組合がないのか?

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インプに、SNSによって収入が増えたか聞いた。彼女は、まだ経済的に苦しんでて、SNSでのサポートを多く受けることと、現実の生活状況が繋がるわけではないことを学んだと言っていた。トランス女性は財政運用に苦しみながらも作り出したアートで生活を得ている。自己防衛に集中できるのは稀である。彼女が落ちた時、人々はデスドロップするに違いない!と考え、他の人は彼女のルックをtootかbootだけで判断してくる。私たちは彼女たちがどうやって安全な家を手に入れたのか尋ねない。彼女たちの見た目が好きだけど曲を買ったりチップを払いにバーに行ったり彼女たちの仕事に見合った公平な賃金を要求するわけじゃない。

私たちは、「彼女たちは女の真似をしてる」と言う。でも、シスジェンダーや女性向けの美容業界がトランスやドラァグから文化を盗み続けていることに関して私たちは何も言わない。真似してるのは誰なのか?

 

アングルを生み出してポーズを決めているインプを見て思う。もし彼女がシスジェンダーの女だったら、モデルになって5つ星のホテルに泊まってマネージャーに給料の交渉をしていたのだろう。だけど現実世界では彼女はステージの上に立つ時だけ愛される。

 

ポーズを決めているインプを見て思う、あなたは素晴らしい見た目で居続けるのか、トランスの女性らしさは幻想を超えた価値を持つのかと。

 

リアルなドラァグクイーンであり続けるトランス女性を否定するあなたは何なのだろう。

 

引用サイト

https://www.them.us/story/imp-queen-trans-drag-queens/amp?__twitter_impression=true